心が美しければ字も美しい

ある人から、差し上げたお手紙に関するちょっとした感想を言われました。

とっても嬉しい言葉でした。

『字が綺麗なんですね。こういう手紙は初めて貰いましたよ。』

「本当~!だったら、うれしい~。」

「便箋と封筒‥それに後ろに貼ってあるシールは京都で買ったの。それぞれ、別々のお店で」

『だと、思った。』

この方は、本業とは別にアーティストなので、尚更、言葉の中に含まれるニュアンスが私の心の中に響いてきました。

「私ね…20代の頃に受けた面接で、面接官が履歴書を見てこう言われたの。」

『あなたは字が汚いですね。』

この一言は、若かった私にとって、とてもショックな一言でした。更に、この面接官は、私に追い討ちを掛けるように、こんなことも仰られました。

『髪の毛は黒く染めて頂きます。』

私は生まれつき髪の色が明るい茶色で(生粋の日本人です(笑))、美容師さんにも、良く、

『あなたの髪の色は素敵な色ね~。こういった具合には染めても決してならないのよ。』

そうなんだ~。

確かに友人や知り合いに良く、サラサラで茶色くていいよね~。て言われるけど、こういう色は、人工的には無理なんだ~。

親に感謝だね!

と、思っていた。

せめて‥【地毛】なのか?どうなのか?確認して下されば、その場で言いようがあったのだけれど、若く経験がない上に、最初に字が汚いと言われてしまった私は、為す術がありませんでした。

面接が終わり、男性面接官が席を外された後で、女性面接官が、

『さっきはすみませんでしたね。地毛ですよね。』

と申されましたが、ダブルにショックを受けていた私は、その言葉を殆どうわのそらで聞いていました。

帰りがけのバスの中で、突然、涙がこぼれ出しました。

こんな経験をしていた私は、この方の

『字がきれいなんですね。』

この言葉に、本当に喜びを感じたんです。しかも、差し上げた便箋や封筒のセンスを気に入って頂けたようでしたので、尚更、感激したのです。

『それじゃあ、それから練習したんですか?』

「いいえ‥練習はしていません。歳を重ねたら自然にこういった字になったみたい。」

そこで、はたと考えました。

今回の長旅では(というより、今年に入ってから)、弘法大師に何度、縁(えにし)を感じたことでしょう。

行く先々でゆかりのものや人、また、東寺の素晴らしい夜桜を観る機会に恵まれ、坐像を拝見する機会にも恵まれと、本当にご縁を感じる旅でした。

【弘法も筆の誤り】と申しますが、私が旅をしている最中にきっと‥ご一緒に廻られ、私に字の教授をいつの間にかなさっていらっしゃったのかもしれません。