『キャリー』と言う映画

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DVDでクロエ・モレッツ版の『キャリー』鑑賞。
スティーブン・キング原作小説の三度目の映像化とか言われていますが、どちらかと言うと、デ・パルマが撮った『キャリー』のリメイクって位置づけかな。
しかし、あちこちでガッカリリメイクって声をずいぶん聞きました。
本当なんでしょうか。

今回注意してみようと思ったポイントは三つ。
⑴ 今この時代にリメイクする意義があるのか
⑵ 制作者が勝算有りと考えたポイントは何か
⑶ 監督、役者は適当だったか

結論から書きますと、映画の出来はなるほど世間の評判通りあまり良いものではありませんでした。
あちらの国には、男の子が女の子を誘って暗がりでいちゃいちゃする口実としての(若干偏見あり)デートムービーというジャンルがあるそうですが、そんな感じのユルめの仕上がりです。
なので、逆に言えば、家でごろごろしながら観るなら悪い出来ではないと思いました。
(ただしデートムービーとして使おうと思うと、あちこち血まみれですし、なにより冒頭出産シーン、続いて女性の生理のシーンと続くので、若干気まずい思いをするかも)

さて⑴リメイクの意義ですが。これはあったなと思いました。
イジメやらDVやら狂信的な信仰やらの問題はいまだにあるわけで、一巡してもう一度やってみるのも悪くないなと思いました。

つづいて⑵制作者の意図の点。これも意図そのものは悪くないなと思いました。
デ・パルマ版よりも各キャラクターの性格づけがはっきりしていて、行動原理が解りやすい所なんかは(どちらが好みかの問題はあるにしても)評価できる点ではないでしょうか。

お母さんは、旧作よりは娘に対する愛情が感じられる表現になっていました。
旧作だと狂信がより前面に出ていましたが、今作では娘を案じる思いが間違った方向に向いている感じになっています。
これも好みは分かれるにしても、試みとして面白いと思いました。

主人公キャリーが早い段階で自分の力に気づくように変更したのも、意図は理解できます。
前作だと男の子にプロムに誘われたのが自己評価を上げるきっかけになっていましたよね。つまり

クラスの虐め、母親の支配→自己否定→男の子に誘われる→自己評価の回復→外の世界に踏み出してみる→成功体験→(自己肯定の)前提の否定→絶望→世界そのものの否定

という流れだったわけですが、それが

クラスの虐め、母親の支配→自己否定→自分の隠された能力に気がつく→自己評価の回復

という流れに変わっているわけです。
そこから、 男の子の誘い→自己肯定の強化 という感じでしょうか。

変えた事で、男の子の誘いを受ける一連の流れが納得しやすくなっています。
ずっと自分を否定して生きてきたわけですから、学校でもトップクラスの人気者に誘われるってのは相当な冒険なわけです。
そこで、「あたしってそんなダメなだけの人間じゃないのかも」って心の変化を一回入れておいた事で、その部分が納得しやすくなっています。

反面、デメリットとして行動の意味そのものが変わっちゃうって事ですね。つまり

(自己肯定の)前提の否定→絶望→世界の否定

という流れだったのが、今作では自己肯定そのものの否定ではないため、世界そのものの否定には至らないわけです。
彼女にはまだ『わたしには隠された力がある』という心の支えがあるので。
そこで旧作では”世界を否定する行動”だったものが”心を傷つけた者への復讐”という意味に変わっています。

ほぼ同時期に公開された『クロニクル』と構造は同じですね。
そしてあちらは面白かったわけですから、これでいけると製作陣が考えたのがあながち間違いとも言い切れないんですよね。
でも失敗した。うーん。

敗因はなんでしょうね?
せっかく性格づけをはっきりさせたのに、それぞれのキャラクターが思ったほど生きていないってのは一つあるかな。
これは(意味は変わっているのに)外形的なストーリーの流れを、デ・パルマ版に沿った弊害かもですね。

登場させたIT系のガジェットも意味ありませんでしたね。
イジメを動画投稿サイトにアップするなんて、まさに今映画にするべき話題なのに、あっさり流されてしまいました。

結局、あのラストありきなのかな。
新要素に拘ってると旧作のストーリーの流れから外れちゃうって判断なのかなと思います。
でも、今作るんなら今の話にしちゃって良かったんじゃないのかなあ?
『クロニクル』では動画や携帯の使い方が上手かっただけに余計にそう思いました。

それからですね。
人によっては最大のガッカリポイントかもしれないVFXの変さ、かな。
あえて下手とは言いません。映画と合っていない感じの変さって意味です。
どう変かと言いますと、『エクソシスト』を見ていると思っていたら実は『ハリー・ポッター』でした、みたいな感じですね。
はじめから『ハリー・ポッター』ですと言われていれば気にならなかったと思うんですよ。
『ハリー・ポッター』好きですし。

とにかく企画段階での意図はそんなに悪くなかったんだと思います。
でも成功はしなかった。そんな感じですね。

長くなったので大急ぎで⑶。俳優と監督。
お母さん役のジュリアン・ムーア最高。上手いなー。
クロエ・モレッツも意外と良かったですね。
イケてない子という役にしては可愛すぎるんじゃないかなと心配しましたけれど。
始まってみたらおどおどした演技が、あーいるなあって感じでした。
自信なさげな態度が周囲から暗い、どんくさいと見られがちな子の感じが出ていたように思います。
もっと自身を持って行動したら可愛いのにね。ってまさに、そういう役でした。
スー役のガブリエラ・ワイルドも良かったですね。
そんなに演技力の必要な役じゃ無かったので演技力は分りませんけど。
可愛いので全て許します。

で最後、監督のキンバリー・ピアース。
んー、この脚本には合っていなかったかも。
もう一回『ボーイズ・ドント・クライ』みたいのを撮ってみてほしいかな。